宮沢賢治学会イーハトーブセンター
1990年9月22日設立
生前には、ほとんど世に知られていなかった宮沢賢治の人と作品の魅力は、草野心平をはじめ、すぐれた先人たちによる紹介・推賞や、普及のための努力の積み重ねもあって、没後六十年近くを経たこんにちでは、日本国内はもとより、海外にも広く知れわたり、その声価は着々と高まりつつあります。愛読者・敬慕者・研究家の数は、すでに数えきれず、それらの人びとによって、それぞれの立場から賢治宇宙への真摯なアプローチが試みられ、多くの貴重な成果がもたらされてきました。
こうした成果が一か所に集められ、それらに万人が自由にいつでも接することができるようにならないものか。また、賢治に関心をもつ人たちが、わけへだてなく一堂に会して、のびのびと意見交換や研究発表、研究活動をすることのできる〈場〉がつくれないだろうか。こうした夢が語られるようになってから何年もが過ぎ、とりわけ、花巻市に宮沢賢治記念館が開設されて以来、賢治センターとしての記念館の特性を生かしつつ、それをいっそう拡大充実する形で、ひとつの組織が考えられないかという、具体的な提案も、さまざまな方面からなされるようになりました。
このような気運を受けて私どもは、賢治が生まれ育ち、苦闘し、また、その作品世界の根源 でもあった岩手県花巻市に、ひとつの場、ひとつの有機的な組織の設立を発起し、これを「宮沢賢治学会イーハトーブセンター」と命名することにいたしました。この名称には、ここを賢治宇宙・賢治精神の探究の最先端をになう場としたい、しかも単に研究者ばかりでなく、賢治の人と作品に関心のあるすべての人が自由に平等に交流でき、また利用できる開かれた《広場》、かつ《情報センター》にしたいという願いがこめられております。
この趣旨にご賛同いただける一人でも多くの方々が積極的にご参加・ご協力くださることを切に期待いたします。
イーハトーブとは
イーハトーブとは、賢治の独創による地名です。童話集『注文多い料理店』の自筆広告文には「実にこれ(イーハトーブ)は筆者の心象中にこのような情景を以て実在したドリームランドとしての日本岩手県である」とあります。