芸術分野における優れた業績を顕彰する文化庁の芸術選奨において、このたび盛岡市の書家・沢村澄子さんが、文部科学大臣賞を受賞されました。
文化庁の発表した「選考経過」によれば、今回の沢村さんの受賞は、宮沢賢治イーハトーブ館において2022年7月から10月まで開催された、「宮沢賢治─沢村澄子 現象的書展」における「言葉と対峙する真摯な姿勢」が、高く評価されたものです。
同庁による「贈賞理由一覧」には、沢村さんの業績について、次のように記されています。
沢村澄子氏は、書の流派に所属することなく、個展を中心として自己の表現を提示し続けている書家である。その作品は、自分にとって切実な言葉をいかに書くかという、言葉と書のせめぎあいの場に成立している。造形性と運動性を交差させ言葉を書きつける表現は、この現代という時代に共鳴しあうステージに到達している。室内空間を出て、展示フィールドを屋外へと広げるなど、その表現の更なる拡張を続けている。切実な思いを吐露する作品群は、後進へも大きな影響を与えることと思う。
※
一方、沢村澄子さんご自身は、今回の受賞へのコメントの中で、次のように述べておられます。
「ワレラ ヒカリノ ミチヲフム」と宮沢賢治は言いました(「花巻農学校精神歌」抄)。疫病、戦争といった暗いニュースが続く中でも、そのヒカリを見失うことなく、いよいよたくさんの皆さんにその大事が届けられるような書作を心して参ります。
2023.2.27 沢村澄子
沢村澄子さんは、2019年宮沢賢治賞奨励賞も受賞しておられます。
そしてまた2022年に、貴重なお仕事の舞台としてご一緒させていただいた私ども宮沢賢治イーハトーブ館としても、このたびの沢村澄子さんの受賞を心からお祝い申し上げるとともに、今後ますますのご活躍をお祈りいたします。
※
なお、沢村澄子さんの今回の受賞対象となった「宮沢賢治─沢村澄子 現象的書展」の図録は、宮沢賢治イーハトーブ館の売店において、1部1,500円で販売しております。
全50ページの充実した内容で、屋内で展示されている全作品のほか、壮大な野外インスタレーションも、迫力満点の写真で収録されています。
図録所収の、宮沢賢治学会イーハトーブセンター前代表理事・岡村民夫による論考「ライフ・オブ・ラインズ 沢村澄子と宮沢賢治」は、宮沢賢治自身の「書」、またその作品中に現れる「文字」の魅力を紹介しつつ、沢村澄子さんの「現象的書」との多彩な共鳴を、解き明かしています。
この機会にぜひお求め下さい。
※
以下に、図録の表紙とそのページのごく一部を、ご紹介いたします。
企画展「宮沢賢治─沢村澄子 現象的書展」図録・一部紹介