2022年度の第32回宮沢賢治賞・イーハトーブ賞と、各奨励賞の受賞者が、下記のように決定しました。
賞の贈呈式は、3年ぶりに花巻市のなはんプラザで、9月22日に開催する予定です。
宮沢賢治賞
栗原 敦 様
宮沢賢治の思想と事績と表現に関して綿密に調査し誠実に考察した論稿を、2021年に『宮沢賢治探究』上下二巻に集成し、賢治研究が多様に生まれ続ける中、実証と思索の統合が重要であることを示した業績に対して。
【選考理由】
本賞の栗原敦氏は、宮沢賢治の思想と事績と表現に関して、綿密に調査し誠実に考察した論稿を、2021年に『宮沢賢治探究』(上巻「思索と信仰」、下巻「表現の論理」)に集成した。賢治と同時代の思想を広く参照し、賢治をめぐる家族・関係者・研究者に関する証言は貴重で、膨大な草稿に向き合い、年譜や事典の恣意的な記述や解釈を厳しく剔抉している。その上で、作品中の悲しみを抱える者への共感性が、思想や事績にも通底していることを指摘した。多様な様式で生まれ続ける賢治研究において、実証と考察を統合することの重要性を示した業績は宮沢賢治賞にふさわしい。
宮沢賢治賞奨励賞
朗読劇『銀河鉄道の夜』制作チーム(代表=古川 日出男)+ 監督・河合 宏樹 様
東日本大震災の2011年の12月から各地で上演した朗読劇「銀河鉄道の夜」を、コロナ禍中の21年に無観客野外朗読劇「映像作品「コロナ時代の銀河」」として映像化し、YouTubeで無料配信した功績に対して。
【選考理由】
奨励賞の朗読劇『銀河鉄道の夜』制作チーム(代表・古川日出男)+ 監督・河合宏樹氏は、東日本大震災後の2011年12月から各地で上演した多声的な朗読劇「銀河鉄道の夜」を、コロナ禍中の21年3月に改訂し、無観客野外朗読劇「コロナ時代の銀河」として映像化し、YouTubeで無料配信した。タイタニック号の乗客とカムパネルラに訪れた悲劇と、現代に訪れた困難を重ね、廃校の校舎から校庭へと開放されていく空間において、多声を越え鎮魂と希望のために連帯する方途を示した功績は賢治賞奨励賞にふさわしい。
イーハトーブ賞
人形劇団プーク 様
宮沢賢治生前の1929年に人形劇団を創設し、48年の再建第一作に「オッペルと象」を公演し、53年には長編人形映画「セロ弾きのゴーシュ」を制作し、節目ごとに「オッペルと象」を再演してきた営為に対して。
【選考理由】
本賞の人形劇団プーク氏は、宮沢賢治生前の1929年に創設された人形劇団で、48年の再建第一作に、農民に寄り添う姿勢に共鳴し、「オッペルと象」を選んだ。53年には長篇人形映画「セロ弾きのゴーシュ」を制作し、第一回東南アジア映画祭特別賞を受賞している。多彩な人形を操り、人間も舞台に上がり、音楽を活用し、71年には専用劇場も開設した。その後も「オッペルと象」を節目ごとに再演してきた営為はイーハトーブ賞にふさわしい。2019年(劇団創設90周年)からの再演は脚本・演出を一新し、本年1月に千秋楽を迎えた。
イーハトーブ賞奨励賞
アザリア奇譚部 様
宮沢賢治が盛岡高等農林学校時代に参加した同人誌『アザリア』の、同人13名の交流を2015年から紹介し、17年には『アザリア』創刊百周年記念展を企画し、コロナ禍中の21年にはYouTubeラジオで発信してきた営為に対して。
【選考理由】
奨励賞のアザリア奇譚部氏は、宮沢賢治が盛岡高等農林学校時代に参加した同人誌『アザリア』の、同人13名それぞれの人物像と彼らの交流に注目してきた。その賢治を巻き込む青春群像を、2015年からコミック『アザリアの咲いた本』(全5巻)で紹介し、17年にはそれぞれの遺族の協力を得て『アザリア』創刊百周年記念展を企画し、コロナ禍中の21年にも「アザリア奇譚部」名義のYouTubeラジオで発信してきた。賢治の新しい魅力を軽快なフットワークで発信した功績はイーハトーブ賞奨励賞にふさわしい。
贈呈式について
賞贈呈式は、令和4年9月22日(木曜)午前10時より、花巻市定住交流センター(なはんプラザCOMSホール)で開催します。
贈呈式の詳細については、後日、改めてお知らせいたします。