夏季セミナー「イーハトヴ童話『注文の多い料理店』の世界観」
現在開催中の企画展示「1924年の春─『春と修羅』『注文の多い料理店』刊行 100 年─」と連携して、童話集『注文の多い料理店』をテーマに、夏季セミナーを開催します。
「序」の朗読で幕を開け、シンポジウムでは気鋭の宮沢賢治研究者たちが、様々な角度から作品世界に迫ります。
多くの皆さんのご参加をお待ちしております。
〇期日: 2024年7月27日(土)
〇会場: 宮沢賢治イーハトーブ館 1階ホール
〇内容:
13:00 受付
13:30 代表理事あいさつ
13:40 朗読『注文の多い料理店』から「序」(藤澤 陽子)
13:50 シンポジウム
司会(大島 丈志)
パネリスト(川上 優理子 深田 愛乃 牧 千夏)
~休憩~
15:20 クロストーク
会場からの質疑応答
17:00 懇親会(山猫軒)
朗読
藤澤 陽子(ふじさわ ようこ)
語りの会 風楽堂主宰
語りを古屋和子氏、発声を藤田京子氏、図書館改造等を赤木かん子氏に師事。
JPIC読書アドバイザー。全日本語りネットワーク会員。この本だいすきの会岩手支部長。
パネリスト
川上 優理子(かわかみ ゆりこ)
東北大学大学院文学研究科日本学専攻日本文学専攻分野博士課程前期二年
演題:「「黄いろのトマト」論─子ども像の複数性を手がかりに」
発表概要
「黄いろのトマト」では、純粋無垢な子どもであるペムペルとネリが外の社会に拒絶される悲しみが印象的に描かれる。しかし、サーカスで働く子どもや「私」もまた子どもなのである。彼らは子どもでありながらも、ペムペルたち兄妹と必ずしも同質ではない。一見強固に見える「子ども」と「大人」の対立構造に対し、彼らの存在がどのような影響を与えうるかについて、『注文の多い料理店』の諸作品も視野に入れて考察をおこなう。
深田 愛乃(ふかだ あいの)
慶應義塾大学・千葉大学非常勤講師
演題:「イーハトーブ童話にひそむ「下種」の思想」
発表概要
本発表の目的は、宮沢賢治の童話の背景に込められた仏教信仰のあり方について明らかにすることである。賢治の童話作品の多くは、改稿過程を経て直接的に信仰を示す用語を背後にひそめていった。では、賢治が亡くなる間際まで貫いたはずの法華経信仰は「イーハトーブ童話」にどのように関わっているのだろうか。本発表では、〈教化〉としてではない観点から、この問いについて「下種」という仏教思想を手がかりに考えてみたい。
牧 千夏(まき ちなつ)
奈良教育大学准教授
演題:「『赤い鳥』と『注文の多い料理店』の擬人化表現」
発表概要
『注文の多い料理店』が出版された同じ時代に、注目を集めた童話雑誌があった。『赤い鳥』である。『赤い鳥』は、動物や植物を擬人化した童話を多く掲載したが、それは『注文の多い料理店』も同じである。本発表では、それらの擬人化表現の違いを統計的な観点で比較する。そして、その表現の違いが童話のテーマとどのように関係するかについても、考えすすめていく。
司会
大島 丈志(おおしま たけし)
文教大学教授